新卒で入社して間もない頃、仕事が出来なさ過ぎて非常に悩んでいました。
大学生の時に掛け持ちしていたアルバイトでは、両方とも仕事が出来るやつだと評価されていたので、社会人になっても仕事が出来る側になれるだろうと甘く見ていたのですが、全く仕事が出来ずに同期にも先を越され上司から呆れられる始末。
たまたまアルバイトでは上手くいっただけで、自分には何の能力もない凡人以下の存在なんだと落ち込む日々でした。
「社会人基礎力」を知るまでは。
この「社会人基礎力」を知ったことで、自分には能力がなかったのではなく、仕事に対する取り組み方や考え方の基礎が備わっていなかったんだと分かり、それからは「社会人基礎力」を身に付けることに注力しました。
以来、働き方もガラッと変わって、上司から認められるようになるまで成長することができました。
今回はそんな「社会人基礎力」について解説していきます。
この記事を読んで分かること
・社会人基礎力とは何なのかを知ることができる・社会人基礎力がいかに必要なものなのか理解できる
・どうすれば社会人基礎力が身に付きやすいか分かる(実体験を元に解説)
社会人基礎力について
社会人基礎力とは?
社会人基礎力とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。
「人生100年時代」や「第四次産業革命」の下で、2006年に発表した社会人基礎力はむしろその重要性を増しており、有効ですが、「人生100年時代」ならではの切り口・視点が必要となっていました。
こうした状況を踏まえ、平成29年度に開催した「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」において、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義しました。
社会人基礎力の3つの能力/12の能力要素を内容としつつ、能力を発揮するにあたって、自己を認識してリフレクション(振り返り)しながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが、自らキャリアを切りひらいていく上で必要と位置づけられます。
引用:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
要約すると、「人生100年時代」の到来などによって時代が変わりゆくなかで、会社から求められるものに応えられる能力がないとキャリアを築けるどころか社会人として死ぬよ。ということですね。
社会人基礎力は何故必要?
社会人基礎力がなぜ必要なのか?
それは、当たり前だった「終身雇用」や「年功序列」が当たり前ではなくなってきているからです。
実績や売り上げ、専門的なスキルによって給与が上がったり、昇進できる時代に移り変わってきているので、ただ長期間勤めているだけでは年収が上がっていくどころか下手すると解雇される場合もあります。
そうならないために身に着けるべきなのが、どの会社でも通用する力である社会人基礎力なのです。
つまり、社会で活躍し続け、今後生涯を通して安心して働いていけるように必要になってくるのが社会人基礎力ということになります。
もう少し具体的にしましょう。
これまで当たり前に存在し、なくてはならないはずだった職業がさまざまなテクノロジーで置き換えられるケースが増えているのは既に周知の事実だと思います。
現在進行形でIT化が進んでおり、次第に人を雇うのは、ロボットでは決して代替できないクリエイティブな作業が必要になったときに限られてくるでしょう。
そうなったときに避けられないのは、ロボットでも代替できるような仕事しかできない人の失業です。また、「職業の寿命」が短くなってきていることにも注目しなければなりません。
流行り廃りの流れが速く、モノが次から次へと溢れる現代にとって、最先端だった技術がいつの間にか時代遅れになっていたというのはよくある話になりつつあります。
私たちの親世代、祖父母世代なら良く分かると思いますが、ケータイだけで見ても1980年代後半から1990年代前半にかけて普及したポケベルから、たった20年経たずでiPhoneが誕生したという歴史があります。
こういった急速な時代の流れにおいて、ある日突然仕事がなくなるということはあり得る話ですし、自ら臨機応変にジョブチェンジしていくことも必要になってくるかと思います。
そこで必要になるのが専門的なスキルではなく、どこでも通用するスキル、社会人基礎力なのです。
社会人基礎力さえあれば、会社自体が倒産しない限りは生き延びることができますし、転職もしやすくなるのです。
社会人基礎力が何故必要なのか分かったところで、社会人基礎力は具体的にどういうものなのか?どうすれば身に付くようになるのかをみていきましょう。
社会人基礎力は3つの能力(12の能力要素)のこと。どうすれば身に付く?
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
社会人基礎力は具体的に以下の3つの力のことを指します。
・チームで働く力
・考え抜く力
前に踏み出す力
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
前に踏み出す力というのは行動のことで、一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力です。
それぞれ3つに分かれています。
主体性=物事に進んで取り組む力
働きかけ力=他人に働きかけ巻き込む力
実行力=目的を設定し確実に行動する力
主体性とは、誰かがやってくれるだろうではなく、自ら率先して行動することです。
会議を例にすると、自分は何も発言しなくても勝手にまとまるし適当にやり過ごそうと思わずに、積極的に参加する意識が必要です。
働きかけ力とは、なんでも自分1人でしようとしないことです。
何人かで協力することで一気に捗る作業というのはあると思いますが、積極的に声をかけて協力してもらいましょう。
僕の場合は棚卸なんかがそうでした。
棚卸は言ってしまえば単純作業なので、新人に回ってくる仕事でした。
新人の中でも特に仕事のできなかった自分は、その罪悪感から1人で棚卸をしていました。
けれど、この働きかけ力を学んでからは同期に一緒にやってくれないか頼むようになり、これがきっかけで同期とぐっと距離が近づきました。
実行力とは文字通りの意味ですが、目的を設定しなければそもそも働きません。
ですので、大事になってくるのは目的の決め方です。
僕はこの目的の定義が曖昧だったので、目的と手段がしばしば混同してしまって何が目的なのか分からないということがありました。
ある日、上司から資料を作っておいてと頼まれました。
その時に、最初に思い浮かんだのが「何ページくらい用意したらいいのか」、「どういうレイアウトがいいのか」というあくまで手段であって目的に直結しないような質問でした。
しかし、ここでの目的は上司にとって完璧な資料を作成することなので、聞くべきことはその資料はどこで誰に何のために使われるのかです。
正直これが分からなければ資料作成に取り掛かることはできませんが、この時の僕は何故かそういった質問が真っ先に出てこなかったんです。
こういったこともありますので、目的の設定を見誤らないようにしましょう。
チームで働く力
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
チームで働く力というのは、多様な人々とともに、目標に向けて協力する力のことです。
それぞれ6つに分かれています。
・発信力=自分の意見をわかりやすく伝える力
・傾聴力=相手の意見を丁寧に聴く力
・柔軟性=意見の違いや立場の違いを理解する力
・状況把握力=自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
・規律性=社会のルールや人との約束を守る力
・ストレスコントロール力=ストレスの発生源に対応する力
上記の6つに関してはとくに言うことはないのですが、発信力について1つだけ注意点があります。
それは、意見を言うのと自分の言いたいことを言うのは違うということです。
自分の言いたいことを言うのでは発信力は身に付きません。
ある1つの問題や課題に対して、多様な意見があることを知り、それらに配慮しつつも、合理的、論理的な思考と、データと事実に基づいた分析によって自分の考えを述べることが発信力を身に付ける方法です。
チームで働く力で大事なことは、1人でできることは限られているという自覚です。
1人でできることの中で自分が苦手なことは、得意な人に任せた方が組織全体として効率が上がります。
IT化が進むにつれて、誰でもできる単純な作業は全てAIなどのロボットに一任する流れになってきていて、より複雑な作業ができる人だけがこの先の社会で安定して生き残れるようになるでしょう。
このような専門化が進む社会において、自分の足りない部分は他の人に補ってもらい、その代わり〇〇をやらせるなら君だと言われるくらい、突出した能力を見出すことに特化していった方が良いでしょう。
そのためにもまずは普段自分が苦手だと思っているところはどこかを把握する必要があります。
考え抜く力
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
考え抜く力というのは、そのままの意味です。
まずは疑問を持ちましょう。
それぞれ3つに分かれています。
・課題発見力=現状を分析し目的や課題を明らかにする力
・計画力=課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
・創造力=新しい価値を生み出す力
課題発見力は、普段物事を深く考えない人にとっては難しいところだと思います。
実際に僕は苦戦しました。
あまりにも課題が見つからなかったので、上司に直接何をしたらいいか聞きに行ったくらいです。(めちゃくちゃバカにされました)
そこで上司に教えてもらったのが、何をしたらいいかと聞くのはやる気があるように見えて、実は仕事を避けて作業に落としたがっている行動だということでした。
作業は仕事ではない=考えていないものは仕事ではないということが分かり、疑問を持つという意識がないと課題は見つからないんだなと理解しました。
不思議とこの課題発見力が身についてくるとあらゆる知識も付いてきて、少しだけ仕事が出来る人に近づけた気がしました。
それも今思えば当然の話で、課題を発見すると当然その課題を解決するために行動しますが、そのように何かを解決しようとして生まれるものが知識だからです。
結論として、何でも作業だと結び付けてしまうと退屈でめんどくさいものに変わってしまいますが、常に目の前で起こっていることはどういう学びになるのか、その都度その場で考えることで、それまで見えてこなかった新しい課題も見つかります。
計画力は、課題の解決にかかるおおよその期間を割り出し、その期間を現状の課題解決に充てられる日数と時間まで細かく細分化して日ごとにどこまで進めていくのかといった綿密なスケジュール管理が必要です。
創造力は、日ごろから自分の興味関心がある事柄だけでなく、幅広い視野を持ってたくさん刺激を受けて吸収することが必要です。
人生100年時代の社会人基礎力
冒頭の経済産業省の引用文にも記載されていましたが、
これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力を「人生100年時代の社会人基礎力」と新たに定義されています。
これからの人生100年時代に向けて、以上の3つの能力・12の能力要素以外にも、新たに「3つの視点」が必要になるそうです。
出典:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/)
3つの視点
まとめ
社会人基礎力を身に付けておいた方がいいのはどんな人?
・自分には何も能力がないと悲観的になっている人
・この先ずっと安定して働いていきたい人
・いつか転職をしたいと考えている人
これに当てはまる人は必須レベルで身に付けた方がいいですが、そうでない人も身に付けておいて損はないので、正直全員に当てはまります。
社会人基礎力がどうして必要なのか理解できたけど、結局どうしたらいいか分からない・・・
確かに細かく分かれているので、そう感じるのも無理ないですね。
1つ1つ順番に身に付けていけばいいと思いますが、実際に身に付いたのかどうかは判断が難しいところですよね。
そこで、以下の5つの質問を用意しました。
すべての質問にYESと答えれるようになれば、ひとまずは社会人基礎力が身に付いたと言っていいと思います。
①自分毎のように現状の問題点や課題を見つけ出せるくらい常にアンテナを張って仕事ができるか?
②見つけたら改善・解決するために自ら率先して行動できるか?
③1人で取り掛かるのが難しいと分かれば周囲の人間に頼ることができるか?
④誰彼構わず柔軟にコミュニケーションを取ることができるか?
⑤常に目的を持って仕事に取り組むことができるか?
以上、今回は社会人基礎力について解説しました。
最後までお読みいただきありがとうございました。